Claudeに「コードを書いて」と頼むだけなら、チャットの回答をコピーして自分で保存する方法でも足ります。でも、調査、変換、テスト、修正までを一続きの作業として任せたいなら、実行環境の有無が大きな差になります。
2026年9月、Claude PlatformのCode Execution Toolが、Pythonでデータを計算する道具から、Bashを実行しファイルを書き換える開発環境へ広がりました。ここでは「何ができるようになったか」よりも、どこまで任せてよく、どこからを自分で検収すべきかを整理します。
Code Execution Tool v2は何を変えたのか
従来のCode Execution Toolは、Pythonを実行して表計算やデータ分析を行う用途が中心でした。v2ではBashコマンドを実行し、コードや設定ファイルを作成・編集できます。つまり、モデルが返したコード片を人間が手でファイルへ移すのではなく、実行環境の中でファイル生成、テスト、ログ確認までを同じ流れで進められます。
Anthropicの公式ドキュメントでは、コード実行はサンドボックス化された環境で動き、ファイル操作もその環境内に閉じると説明されています。ここは「自分のPCのファイルを自由に変更する機能」と読み替えないことが重要です。
最初に試す小さな流れ
最初から大きなリポジトリを渡すより、入力と出力を限定した小さな処理から始める方が安全です。例えば次のような流れです。
mkdir -p demo
printf 'name,score\nA,80\nB,95\n' > demo/scores.csv
python - <<'PY'
import csv
from pathlib import Path
rows = list(csv.DictReader(Path("demo/scores.csv").open()))
best = max(rows, key=lambda row: int(row["score"]))
Path("demo/result.txt").write_text(
f"best={best['name']} score={best['score']}\n",
encoding="utf-8",
)
PY
cat demo/result.txt
この例で確認したいのは、派手な自動化ではありません。入力ファイルが想定どおり読まれたか、出力がどこへ保存されたか、失敗時に何が残るかを観察することです。実運用でも、処理対象のパスと出力先を明示するだけで事故の範囲をかなり絞れます。
AIエージェントに任せるときの境界線
Code Execution Toolは「実行できる」ことと「正しく実行できる」ことを分けて考える必要があります。テストが通っても、入力の取り違えや、古いファイルを読んでいた問題までは自動で見抜けません。
- 作業前に入力ファイルと出力ファイルを列挙する
- 書き換え前に差分またはバックアップを残す
- 生成物の件数、サイズ、重要な文字列を機械的に確認する
- 外部サービスへ送信する処理と公開操作は最後に分離する
特に、Bashで削除・公開・認証情報の読み取りをさせる場合は、サンドボックスの境界と資格情報の扱いを先に確認してください。便利さを理由に「全部許可」にするのではなく、処理ごとに許可範囲を切る方が、後から原因を追いやすくなります。
Code Execution ToolとClaude Codeは同じものではない
名前が似ていますが、Code Execution ToolはClaude PlatformのAPIで提供されるサーバー側の実行機能です。一方、Claude Codeは開発者の端末やリモートrunner上でリポジトリを扱うCLIです。前者で作ったファイルが自動的に後者のローカル作業ツリーへ現れるわけではありません。
この違いを曖昧にすると、「実行は成功したのに手元に成果物がない」という混乱が起きます。API側で作った成果物は、必要なものだけを明示的に取り出し、ローカル側ではファイルパスと検証結果を確認してから採用する、という二段階にすると安全です。
まとめ
Code Execution Tool v2の価値は、チャットの返答を実行可能な作業へ近づけたことです。ただし、Bashとファイル操作が使えるほど、実行結果の検収も重要になります。
まずは小さな入力・限定された出力・再実行できる手順で試す。次にテストと差分確認を足す。最後にだけ外部送信や公開を許可する。この順番なら、AIに作業を任せる範囲を広げても、何が起きたかを自分で説明できます。


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